u1row's blog

作曲、演奏、読書、アプリ制作・・・、生きた証を日々更新

『世に棲む患者 / 中井久夫』読了

中井久夫コレクション」の副題のとおり、短い文章や語りをまとめたもの。
精神科の専門的なことは理解できないが、コミュニケーションという観点で深くて鋭い考察とそれに基づいた実践例にハッとさせられることが多い。なおかつ背景にある優しさが文章から感じられるのでじっくり読みたいという気にさせられる。
とりあえず、覚えておきたい箇所を2箇所引用。
・妄想患者について、「自分を「善人」だと明確に意識しているのではない。それは彼にとって、わざわざ意識にのぼらせて考察するまでもない自明なことである。そして、患者の自己規定にはもう少し「ひねり」がある。・・・「自分はお人よしである」という自己規定である。・・・「お人よし」は権力世界において「利用される側」である。患者は自分を「お人よし」と思い、しかしそれに甘んぜず、「お人よしだから片時もうっかりできない」と警戒心を高めているのが実状である。」
境界例は、たしかに自己愛的かもしれないが、それほど内面的な人間ではない。治療者が内面的な人間を高く買うことを探知してそう行動している場合はあるだろう。しかし、内面化という洗練された防衛機制を持ち出せるものが境界例のような行動化や投影的同一視というプリミティヴな機制に訴えるはずがなかろう。投影的同一視とは、簡単に言えば、自分が腹をたてると相手が怒っているように認知するというということである。