u1row's blog

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『分裂病と人類/中井久夫』読了

3回くらい生まれ変わってもこんな文章は書けないだろうなと思う。
古今東西あらゆる知識を引用しながらも、博識をひけらかす風を微塵も感じさせない。
伝わってくるのは静かな情熱というのか、文章の内容とはかけ離れているようにも思われる「温かさ」が感じられる。
精神科医としての臨床経験が育むものなのか、あるいは、こういう雰囲気を持つ人だから精神科医たり得るのかはわからない。

第1章は分裂病と人類、第2章は執着気質の歴史的背景でテーマとしては対をなしている。
分裂病統合失調症)になる可能性は全人類が持っているだろうという仮定のもと、より分裂病になりやすい者を「S親和者」と呼ぶ。一方、うつ病好発性格として「執着気質」という言葉をあてる。
この時、前者は「世直し」、後者は「立て直し」を唱える者として対照させることができる。あるいは、そこまで単純化できないにしても、S親和者は「問題解決者」としてではなく主に「問題設定者」として行動するのだという。
第3章西欧精神医学背景史は、古代ギリシアから現代までの精神医学史講義という体裁でまとめられている。
ちょっとこれは自分にはレベルが高すぎて飛ばし気味に読むしかなかったが、「魔女狩りの終息と近代医学の成立」など部分的に関心を持って読める項目もあった。