u1row's blog

作曲、演奏、読書、アプリ制作・・・、生きた証を日々更新

『漫画 君たちはどう生きるか/吉野源三郎・羽賀翔一』読了

大ヒット中とのことで、実際どこの本屋でも店頭にずらっと並べられている。
もとは1937年出版だというから、リバイバルとヒットというより、原作とは何か別の意味もしくは文脈で話題になっているんじゃないかと思う。
この作品は読んだことがなかったが、『職業としての編集者』はすごく良くって3回くらい読み返した。
この作品も少年に向けにアレンジされているという点を除くと、根っこに流れている「思想」(というと大げさならば「動機」)は同じだろう。
ただアレンジを施すとどうしても、「わかりやすさ」と引き換えに「ウソくささ」を帯びてしまう。
この作品の場合は、原作とは時代が違いすぎることによる「ウソくささ」と、少年向け(少女は端から対象外)にわかりやすく描いていることによる「ウソくささ」の2重の「しんどさ」を背負っているように感じた。
2017年現在、これを素直に手にとって読む少年少女は、たぶんその素直さ自体が「ウソくささ」を帯びているような気がする。今ヒットしているのは「読みたい本」というよりは「読ませたい本」というニュアンスだろう。そして、その「読ませたい」という感覚には、ある種の「ノスタルジー」と、自分の言葉で語らず名作とされるものを紹介することでお茶を濁す(濁していることにすら気づかない)「無垢なズルさ」が見え隠れする。
と散々な言いようだが、吉野源三郎さんの作品に非があるわけではない。
戦前、昭和12年の感覚がみずみずしく描かれているのはとても刺激的だし、こういった世界観、倫理観をもっている一般の人たちがいてなお、その後日本は戦争に向かったという事実を考えると、ここから学ぶこともたくさんあるように思う。