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u1row's blog

作曲、演奏、読書、アプリ制作・・・、生きた証を日々更新

『読書のすすめ 第3集 / 岩波文庫編集部編』読了


9人の著名人が読書をテーマに書いた散文集。
瀬戸内寂聴のようにテーマどおり若者に読書をススメる内容のエッセーもあれば、列車の時刻表を愛読書に挙げる岡田節人のように独自の読書感を展開するものもあって楽しめた。

特に印象深かったのは、宇沢弘文の「製本と職人気質」に関する一節
氏がスタンフォード大学にいた頃(1950〜60年代)に、スタンフォード大学出版から一冊の本を出したことがあった。
高度な専門書で、数学的な記号や式がふんだんに登場する論文集だったため、日本とオランダの印刷所を通すこみ入った製作手順が取られることになったらしい。
この時、日本の印刷所から送られてきたゲラ刷りには、数学の式の誤りから証明の間違いまで指摘されていたそうで、宇沢氏の共著者ケネス・アロウ教授とともに、日本の労働の水準の高さに感激したのだという。この例に示される「職人気質」の美点は、資本主義の制度的条件のもとでは必然的に抑圧されて、営利的な動機が支配的になってしまい、産業と営利の乖離が、資源配分のメカニズムを不安定にするという議論が紹介されていた。
もうひとつ新藤兼人のエッセーで、永井荷風の『断腸亭日乗』を紹介しているのにも興味が湧いた。
が、実際に読むとなるとちょっとハードルが高そうだな。