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u1row's blog

作曲、演奏、読書、アプリ制作・・・、生きた証を日々更新

『静けさの中から / スーザン・トムズ著 小川典子訳』読了


英国のピアニストのエッセイ。読み終えるのが惜しいと思うくらい良かった。
全編にわたって、心と裏腹な言葉や、心を隠すような表現が見当たらない。
本心を語りながら、下品なぶっちゃけトークにはならないのはなぜだろうかと考えてみる。
思い浮かんだのは「捧げる」という言葉。
本文中に出てきたわけではないが、きっと著者は自分自身を「捧げる」という意識を強く持っているのではないかと思う。
「捧げる」対象は音楽で、手段はピアノとそれを操る自分自身の技術。
そこが一貫しているから、何について語っても誠実な言葉としてこちらに伝わってくるのだと思う。

ずっと前にふと思ったことがあった。
舞台に立つ人には、観衆と対話しようとする人と、ゼウス的な超越した者(あるいは宇宙)と対話しようとする人がいる。
もしこんな風に分けることが許されるならば、著者は後者のタイプなんだろう。

ちょっとだけ意地悪なことを言うならば、
視点が単調なせいで、若干視野が狭く感じられるところがあった。
これは著者に否があるのではなく、読み手の勝手な期待、もしくは構成の工夫で回避すべきことなのかもしれない。