u1row's blog

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『悪の力 / 姜尚中』読了

虚ろな心に悪は忍び寄る。悪を為すことで虚ろな心を満たされるという経験によって、人は悪に囚われ病みつきになる。だから著者は悪は病だという。

いつの世も悪は栄えてきたが、とりわけ現在は危険な状態だという。資本主義の金融化により今後ますます格差が拡大する。悪は「安全」「正義」「自由」の三要素の塩梅で強くなったり弱くなったりする。マネー資本主義は、このバランスを悪が生まれやすい状態へと導く。資本主義は悪の培養基の役割を果たしているのだというのが著者の考え。

決して消えることはないようにも思われる悪とどのように向き合うのか。自分は社会(世間)の一部だという認識がカギだという。
世間は陳腐で、憎悪がはびこり、暗いもの、醜いものがいくらでもある。その中に自分がいることを認め、人を信じることを止めないことが悪に向き合う処方箋だという。

以前読んだ、加賀乙彦の『悪魔のささやき』と通じるところがあった。
こちらの方が、読みやすくわかりやすくまとめられているが、やや説教じみているように感じられた。
「悪の正体」とか「悪との向き合い方」とか、答えがあるのかどうかすらわからない問題に対して、なんとか答えを示そう、わかりやすく説明しようという意図が裏目に出て、やや強引な印象を受けたのかもしれない。後書きあるこの本を書くきっかけになったという自身のエピソードなどを、未消化の状態で言葉にしくれたらもっと引き込まれたかもしれない。