u1row's blog

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『ホッブズ − リヴァイアサンの哲学者 / 田中浩』読了

ホッブズについて知っていることというと、「万人の万人に対する闘争」というフレーズと主著「リヴァイアサン」のタイトルくらい。
どういう人物で、どんな国家モデルを唱えたのかがザックリつかめて、読む前の予想よりも面白かった。

身長は180センチほどあって、生涯独身、91歳まで生きたらしい。「リヴァイアサン」を出版したのは60歳を過ぎてから。
勝手に暗い人物像を思い描いていたが、話が面白く人に好かれるタイプの人だったそうだ。
フランス亡命中には、デカルトガリレイに会って話をしていたらしい。

ホッブスの政治思想を簡潔にまとめると
・人間にとっての最高の価値は、人々の生命の安全にある。
・生命の安全を保証するために、人々が契約を結んでひとつの権力を設ける。
・そうして設けられた権力に対して、人々は抵抗してはならない。
となるという。
3つ目の「権力に対して抵抗してはならない」が最も物議を醸すところで、この言葉を捉えて「ホッブズは絶対君主の擁護者だ」とされることが多い。
が、著者によると、主権者は人民が選んだ代表であって国王とは限らない、また権力に力を与える理由は人民の生命と安全を危険にさらす勢力を牽制し制裁を加える力を与えるためであって、絶対君主を擁護したのではなかったという。この話が繰り返し出てくるが、ホッブズに対する誤解を解くというところにこの本の主眼があるのではないようだ。

近代、現代、現在と人間はいまだに平和を実現できずにいる。
近代国家論のもっとも初期のモデルを築いたホッブズを原点として、われわれの平和に向けた努力がどこにはじまったのかを見据えたいというのが著者の意図のようだ。
ホッブズのモデルは現在にも通じる不変的な要素を備えているというのはよくわかったが、同時に民主主義的なモデルはホッブズに時代からあまり変わっていない、つまり仮想モデルの精度はそれほど上がっていないとも言えるかもしれない。