u1row's blog

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『ホセ・ムヒカの言葉 / 佐藤美由紀』読了

今年の3月に退任したウルグアイ元大統領。
弱者の立場に立った政策で、国民に「ぺぺ」の愛称で親しまれた大統領。
大統領を退任した後も一議員ではあるというから、政治家を引退したわけではないらしい。2012年、ブラジルのリオでの国連会議でのスピーチは、世界中から賞賛の声を集めたという。

「清貧」というと少し色がついていて使いづらい言葉だが、経済的な貧困と心の貧困は別ものであるという信念をもった人。
そんな人は世の中にはいくらでもいるのだが、そのような人が政治家で、しかも一国の指導者となると、途端に激レアな存在になる。
ホセ・ムヒカは、元左翼ゲリラの活動家で、13年間獄中生活を送ったという。獄中でも政治的信念を曲げることなく、解放後ウルグアイ民主化運動を進め、大統領になったのだとか。


これを読んで、「翻って自国の政治家は・・・」と批判するのは簡単だが、そう単純な話でもないように思う。
ホセ・ムヒカの政治家・指導者としての基本姿勢は、「多数派の利益を代表することだ」という。つまり、ウルグアイでは貧しい民衆が多数派なので、民主的な選挙が行われれば自ずと多数派が決定権をもつような体制が築かれることになる。
長く多数派の声が無視された時代があったからこそ、多数派の意見が聞き届けられるという代表民主制に対する屈託ない信頼があるのかなと思う。
「多数派の利益を優先する」というのを、そのまま日本やその他の国にあてはめられるか、というと無理だろう。
むしろ「少数派の声」にどれだけ耳を傾けるかが問題になっているのだから。


「弱者」という言葉は、弱い立場にある「者」、つまり弱さは「人」単位で認識されるものだということが暗示されている。ただ、同じ人間でもある問題については「強い立場」、また別の問題では「弱い立場」にあるということがありうる。
強者と弱者に単純に二分するのが難しい社会にあっては、多数決だけに頼って物ごとを決めるのは危険だろう。ある問題で多数決で信任を得たからと言って、別の問題でも信任を得るとは限らない。立場の入り組む複雑な社会では、その分慎重に時間をかけなければならないこともたくさんあるだろう。

ホセ・ムヒカのある種カリスマ的な発信力や行動力はとても魅力的だが、どのように持ち上げるか(盛り上げるか)ではなくて、どのように評価するかが大切なのだと思う。