u1row's blog

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『謝るなら、いつでもおいで / 川名壮志』読了

とても誠実な取材に基づいた本で、あっという間に読み終わった。

でも、感想はとても難しい。
長崎県佐世保市で、小6の女子が同級生の女児にカッターで切られ亡くなった事件。事件のことは、ニュースで見聞きした程度の知識だったが、いまや自分の子どもがまもなく小6。だからといって、安易に自分の子と関連づけて考えるのもちがう気がする。
ということで、いろいろと感じ考えたにもかかわらず、何を感じ考えたのかがいまひとつ明確につかめないままだ。


被害者と加害者の間には、いくつかの小さなトラブルがあったらしい。
交換日記、Webページへの書き込み、いずれも直接の動機というには些細すぎるようにも思う。
ちょっとした言葉が加害者にとってはとてつもなく重たい意味を持っていたいのかもしれないし、それ自体は引き金にすぎず、もっと重たく鬱屈したものを抱えていたのかもしれない。


加害者の少女はホラー小説を好んだという。
だからといって、フィクションの描写を現実世界で試そうとするだろうか。
フィクションと現実の区別がつかないほどにのめり込んだのかもしれないし、
手法の模倣自体は表面的なものだったのかもしれない。


加害者の父と被害者の父、立場は真逆なのにともに「なぜ」と発する。
でも「なぜ」に対する答えはない。


タイトルの「謝るなら、いつでもおいで」は、被害者父のことばではない。
事件当時中学生だった被害者の兄。
彼の周りの人たちは、彼の心情を慮って、結果として彼には語る機会がなかったという。兄妹仲がよく、事件に関わるいろんなことを知っていたにも関わらず、だれも彼には話させようとしなかった。混沌としながらも言語化することで、ムリヤリにでも心の平衡を保つという方法もあったかもしれないが、彼にはその機会は与えられなかった。
黙り込んで、考え込んで、抱え込んで、10年たったいま、ある意味で父親よりも的確に事件の全体をとらえているように感じられた。

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