u1row's blog

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『迷宮学入門 / 和泉雅人』読了

迷路の話かと思って読み始めたら、早々に「迷宮と迷路はちがう」と書かれていた。迷宮は一本道だから、絶対に迷わず必ず中心にたどり着けるのだという。


ということは、あのミノタウロスの神話は何なんだ?
テセウスは、アリアドネの糸がなくてもミノタウロスのところまで行って戻ることができたってことになる。
著者によると、アリアドネの糸は、迷宮と迷路の混同によって後から脚色され、付加された可能性が高いらしい。


迷宮は中世ヨーロッパへと伝承され、キリスト教的価値観と結びつき、象徴的な意味が与えられるようになる。
興味深かったのは、9世紀にオートフリートという人物が描いた迷宮図。
この人物は、それまでの7重周回路を11重周回路に拡大して、ひとつの型として定着させた。
「11」という数字には意味があり、「十戒」の「10」を超えていることから「逸脱」を、「十二使徒」の「12」には満たないから「不完全」を表している。
つまり11重の周回路は、「罪に穢れた現世」の象徴で、迷宮を抜け中心にたどり着くというのは、現世を通り抜けるという意味を暗示していたのだとか。
中世ヨーロッパでは、地図は上が東で、下が西だったらしい。
迷宮図の出入り口が必ず西、すなわち下に向けられていたのは、太陽の沈む方角で「死」や「冥界」を指しているからなのだという。


迷路がはっきりと迷宮と区別して描かれるようになったのはルネサンス以降で、これを匿名性から記名性への転換という風に説明しているのは興味深かった。

 

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