u1row's blog

作曲、演奏、読書、アプリ制作・・・、生きた証を日々更新

『遠い朝の本たち / 須賀敦子』読了

前に読んだ福岡伸一さんの本で、この著者のことが書かれていたのを思い出して読んでみた。すごくいい本だった。
語彙のないオレには、他に適当な言葉が思いつかない。
「美しい」というのか「ステキ」というのか、
いずれにしてもオレの日常の語彙でうまく言い表せない。
オレの日常が、この人の描く世界に呼応する言葉を持っていないというのは、とても嘆かわしいことかもしれない。


とりわけ、アン・リンドバーグ(大西洋無着陸飛行のチャールズ・リンドバーグの妻で、自らも飛行家で作家)についてのエッセーは、ほんとうに感動した(という言葉しか出てこない)。
親日家のリンドバーグ親日家になったきっかけのエピソードもよかった)は、日本語の「さよなら」という言葉の意味を知って感動したという。
「さよなら」の意味なんて、これまで考えたこともなかった。
「そうならねばならぬのなら」という意味で、「そうであるなら、しかたない」という諦めの表現なんだとか。

God be with you.「神とともに」 の国の人には、別れに際して「しかたない」と諦めの言葉を口にする人たちの精神性が新鮮に感じられたのだろうと著者は言う。
ちなみに、リンドバーグ夫妻は、子どもを誘拐・殺害されるという不幸を経験している。そのことも「さよなら」という言葉の意味に心を動かされる素地になったのではとも言っている。


その他のエッセーも、著者自身のことを語り、家族や友人を語り、本に描かれていることを語っている。
すべては主観で、何かを証明するわけでも説明するわけでもないが、
下手な論説文よりもずっと、真理に迫る言葉にたくさん出会える本だと思った。

http://www.amazon.co.jp/遠い朝の本たち-ちくま文庫-須賀-敦子/dp/4480036288
遠い朝の本たち (ちくま文庫)
遠い朝の本たち (ちくま文庫)