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『レオナルド・ダ・ヴィンチと受胎告知 / 岡田温司・池上英洋』読了

常識なのかもしれないが、「受胎告知」はダヴィンチの初期、二十歳そこそこの頃の作品らしい。
常識なのかもしれないが、「受胎告知」は聖書におけるハイライトのひとつで、絵画や聖史劇で何度も繰り返し取り上げられてきたテーマらしい。
両方とも「へぇ」と感心するレベルの読者=オレにもわかるように、丁寧に解説してくれているので分かりやすいし面白い。
1章で「受胎告知とは」、2章では「ダヴィンチの受胎告知の特異性」「ダヴィンチの実像(仮説)」に迫る。


1章で特に興味深かったのは2つ。
肉体を授かるとはどういうことか、聖書の世界では3つの捉え方があるらしい
 1.すべての霊魂は天地創造の6日間で一気につくられていて、個人が生まれる時に肉体の姿をとる
 2.霊魂は両親によって伝えられるもので、さかのぼるとアダムに由来する
 3.各霊魂は受胎の時につくられ、対峙に吹き込まれる
中世からは3.が支配的なったらしい。


トマス・アクィナスの考えでは、母(mater)は、物質(materia)にすぎない。受胎において能動的な役割を果たすのは「父」。
「母」は、受動的で二義的な役割しか担っていなかったらしい。
処女懐胎は、母マリアの役割よりも、父である天上の神の方に力点がおかれていて、男性的な原理が女性を手段として利用するという構造が見てとれるのだという。


2章は、
万能ダヴィンチを、凡人には理解不能の超人と見るのではなく、
若い頃のダヴィンチには未熟な面が多々見られること、また挫折も人並み以上に経ていることなどを解説しているのが面白い。


初期の作品「受胎告知」には、距離点を意識した構成が見られる。
著者は、デビュー作にしてアナモルフォーズ絵画へあと一歩のところにまで至っていることのすごさを認め、後に史上初のアナモルフォーズ画家になる萌芽をみることができるとしつつも、この段階ではあくまで無意識的な表現にすぎないと釘をさす。


あと、ダヴィンチの描く女性は、「女性ではなく母性だ」というのも興味深かった。やがて最晩年の作品「洗礼者ヨハネ」では、両性具有的な表現に至る。
両性の合一=完全性を追求していたのではないかという。


書いてあることを読んでなるほどとは思うものの、それを咀嚼するだけの基本的な知識がないので受動的な読みしかできなかった。
とりあえず、上述のような面白いと思ったところだけでも記憶にとどめておこう。

http://www.amazon.co.jp/レオナルドダ・ヴィンチと受胎告知-平凡社ライブラリー-岡田-温司/dp/4582766102